拝啓 元カレ上司サマ

煌太は、麗香との繋がりを持っていたくて、オーナー宅に押し掛けた時以来、彼女の状況を教えてもらいに何度か訪ねている。

まさか、麗香の実家や現在の住まいに行く訳にもいかないから、オーナーがもたらしてくれる彼女の情報は貴重なのだ。

百箇日法要が済んだだとか、麗香は子育てに奮闘中だとか、子供達が時々遊びに来て、オーナーが飼っている小型犬と戯れているという。

そんな何でもない日常の出来事を、オーナー夫婦は話してくれている。

「ああ、麗香にひと目会えたなら…」

さすがに田上副社長が亡くなって間がないので、煌太は麗香との接触を控えていた。

とは言っても、特に麗香に会いに行くのでもなく、ただ単に、オーナー夫婦の茶飲み友達になった感が否めないのだけれど。




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