Love Eater
ブクブクと沈んでいく意識は夢現。
それでも、微かに感じた匂いに『六花』と確かめるように名を呼んだ瞬間。
『死ぬのを待つ身に自分の生以外必要ないでしょ?』
響いたのは六花の声。
でも、今ではなく過去の。
ああ、そんな事を言っていたな。
あの冷めきったガラス玉の目をこちらに向けて。
そう、この目を…。
これは…夢の続き……か。
そんな理解に至った瞬間には自分の姿は年若い16歳のものになっていて、向かい合う六花は冷めた目をした子供の姿でそこに在るのだ。
とても子供が吐く言葉とは思えない。
そんな違和感は言葉の響きだけではなく、何の希望も期待も抱かぬ双眸にもゾッと悪寒が走るのを感じる。
何もかもが不自然な生き物に感じた幼小の六花の姿の記憶。
年齢からしてもまだまだ甘え盛りと言える筈であるのに、六花自身自分が子供である事さえ知らずに在るように感じるのだ。
魔女という属性の子供は皆そうなのか?
否、これでも魔女の因子を持つ子供はソルトも何度も見てきている。
今まで見てきた子供たちは魔女の因子を持つという事以外普通の子供となんら変わらず、親に当たり前に甘えて縋って泣いて笑って。
家庭環境の差を上げられては話は別だが、それでもここまでなんの感情も揺らさない姿は初めてだ。
弾いた言葉のままに、すでに目の前のソルトにすら興味はないと大きな水色の双眸はガラスの様に景色を反射させるばかり。
身動きもしなければ喋りもしない。
ただちょこんとごみの山の上に座る姿はまさに人形の如く。
普通であるなら異質な存在とは関りを避けたいものであるだろう。
それが仕事であっても最低限の接触で事を済まそうとするのが正常な人の感覚というもの。