Love Eater



かと言って、魔女が街中でその力を使ったという事実や、目撃者からの通報があるからには神父は動かざるを得ない。

だから、階段を上る間も半信半疑。

意識せずとも自然と緊張の糸がキリキリと張って来る程に。

段々に、本当に六花であるなら良いと思えるほどに他の魔女の何かの企てかもしれないと、ソルトの仕事モードのスイッチが完全に入り切ったのである。

そうして、ようやくたどり着いた屋上へ続く扉の前。

十分な緊張と警戒を持って扉を少しばかり押し開くと外の様子を伺ったのだ。

誰も……いない?

薄く開いた隙間から捉えらえる視界には限りがある。

それでも広がる視界に六花の姿も他の魔女らしい姿も捉えることはできないのだ。

六花であるなら特別その身を隠すでもなく、なんなら扉の真正面に位置するフェンスの上にでも座って足をぶらつかせていても可笑しくはないというのに。

やっぱり、違う魔女か?

なんて小さくも期待に落胆しかけた心は一瞬だけ。

刹那に鼻孔を掠めた甘い匂いには落胆も淡い期待も一瞬で掻き消される。

淡い期待ではなく確信。

次の瞬間には緊張の糸も銃を握る手の力さえも緩んで言いようのない感情に胸が焦がれるのだ。

間違えようのない六花の甘い香りには。

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