稲荷と神の縁結び
清貴さんはエントランスを突っ切って、奥のロビーラウンジの方へ。まだ開店したばかりなのか、人は殆ど見えない。
重厚感のあるエンジ色の椅子と、ロココ調のテーブルの合間をすり抜けるように進む。
すると一番奥に、女性が二人座っているのが見えた。
「紬おばさま、遅くなりまして申し訳ございません」
清貴さんは近付き、頭を下げる。
淡い紫の付け下げを着た人物は‐紬おばさまだ。
紬おばさまの隣には、赤のワンピース姿の女性が座っている。年上の、目力が強くてキツそ……いや、キリッとした雰囲気の女性。
この方が、清貴さんに縁談を進めたい相手か。
「清貴さん、急にお呼びだしして申し訳ございませんね」
いや、微塵も思ってないだろう……ときっと清貴さんも同じことを思っている。
「本日は清貴さんがお休みと伺ったもので、私と彼女…珠紀(たまき)さんのご相手をしただこうと思いましたの。
……ところで、その御方は?」
鋭い睨みが私に飛んでくる。怖い怖い。
「えっと私は……」
「彼女は、僕の部下であり……一緒に暮らしている女性です。いずれ結婚をと考えている人です」
………今、何て言った?
『一緒に暮らしている』確かにそうだ。家政婦代わりだ。
でも……………『結婚を前提』………?
『えっ?!』と思わず声が出そうになる、が『ドスっ』とすかさず清貴さんが私の踵を蹴る。
あぁ……そういうこと、か………?
『恋人のフリをしろ』ってことか?!
重厚感のあるエンジ色の椅子と、ロココ調のテーブルの合間をすり抜けるように進む。
すると一番奥に、女性が二人座っているのが見えた。
「紬おばさま、遅くなりまして申し訳ございません」
清貴さんは近付き、頭を下げる。
淡い紫の付け下げを着た人物は‐紬おばさまだ。
紬おばさまの隣には、赤のワンピース姿の女性が座っている。年上の、目力が強くてキツそ……いや、キリッとした雰囲気の女性。
この方が、清貴さんに縁談を進めたい相手か。
「清貴さん、急にお呼びだしして申し訳ございませんね」
いや、微塵も思ってないだろう……ときっと清貴さんも同じことを思っている。
「本日は清貴さんがお休みと伺ったもので、私と彼女…珠紀(たまき)さんのご相手をしただこうと思いましたの。
……ところで、その御方は?」
鋭い睨みが私に飛んでくる。怖い怖い。
「えっと私は……」
「彼女は、僕の部下であり……一緒に暮らしている女性です。いずれ結婚をと考えている人です」
………今、何て言った?
『一緒に暮らしている』確かにそうだ。家政婦代わりだ。
でも……………『結婚を前提』………?
『えっ?!』と思わず声が出そうになる、が『ドスっ』とすかさず清貴さんが私の踵を蹴る。
あぁ……そういうこと、か………?
『恋人のフリをしろ』ってことか?!