稲荷と神の縁結び
「清貴さんと友達ということは、さぞかし優秀なお兄様なんでしょうねぇ?」
嫌みったらしい言い方の彼女……珠紀さんと言ったか。
言っては悪いが、隙あらばマウンティングする気が伝わってきている。怖い怖い。


「そうなんですよ。私より優秀な友人でして……。院生の誘いを断った時は、教授も随分嘆いておられたんですよ」

そう言われて‐えっ?と驚いた。
そんな話は初耳だ。
確かに圭ちゃんはずば抜けて頭が良かったが、そんな院に誘われてるなんぞ家族は聞いていない。

いや多分……黙ってたんだろな。
圭ちゃんが土地経営を軌道に乗せるまで、うちの家計はあまりよろしくなく……多分圭ちゃんが院に進学してたら、私もちかも大学に行けてなかった。
だから圭ちゃんにとっては、言うまでもない話だったんだろう。


「あら、そんな優秀な方がご友人とは。さぞかし立派に働いておられるんでしょうね?
それで、そのお兄様は現在何を?」

どうやら嫌みったらしく家族全体を値踏みされているようだ。
でも清貴さんは『待ってました!』と言わんばかりに、不気味な笑みを浮かべて畳み掛ける。
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