稲荷と神の縁結び
「ところでこはるさん。今度うちに新米の巫女が数名入りまして、是非ともいちかさんと舞のご指導をお願いしたいのですが……」

「えぇ、構いませんよ。うちのお父様を通じてお話いただければ伺わせていただきますので」

「何なら本日午後から、うちでお手本代わりに見せていただいても」

(つまり…新嘗祭で踊れってことか)
「申し訳ございませんが、午後からわが家でも新嘗祭でして、手伝いに行かねばなりませんので…そろそろ失礼させていただこうかと」

「あら、そうでしたが。ではお父様や皆様によろしくお伝えください」


この会話だけで十分だろうと、私は頭を下げて振り返る。少し後ろには、あの二人。

私は二人に近づいて「申し訳ありませんが、午後からうちでも祭典がありますので…そろそろ失礼させていただきます」とにっこり笑って頭を下げる。
隣に居た清貴さんも「失礼します」と頭を下げると、私の手を引っ張って歩いていく。
一瞬ちらっと振り向くと、呆然としながら二人が見ているのがわかった。
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