稲荷と神の縁結び
「俺はお祖父様のことが好きで、後を継ぎたくてこの道に進んだ。だから今の状況は納得している。
でもお前は…この状況に納得してるのか?
お前だけじゃない。圭吾もだ。
あいつはずっと家に縛られている。大学でも殆ど遊ばず勉強に費やして…全ては『家のため』と言って。好き嫌いじゃなくて『やらなきゃ』って何だよ?
挙げ句の果てに、氏子の娘さんと結婚する理由も『皆が納得するから』って。
そんなアホな話あるかよ」

激しく肩が揺さぶられる。目の前には‐真剣に私を見つめる、あの瞳。
まっすぐ見るあの瞳に、一瞬動きが止まる。


「こはるは……本当にそんな人生でいいのか?」


最近、よくわかったことがある。
圭ちゃんと清貴さんが、何で仲良くなったのか。

二人とも‐大きなものを背負っている。
そこから降りずに、逃げ出さず…向かい合っているもの同士だ。

「……確かに、端からみるとアホな話に思えますよね」

何となく目は合わせられないけれど……私は肩をゆする手を振りほどいた。
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