稲荷と神の縁結び
「なんかお前……いつも方向が間違ってるよな………」

「間違ってるって何ですか?」

なんだか呆れ顔で、ため息をつかれる。
全く何を間違えているのか、心当たりは全くない。何がなんだと表情が歪む。


「……まぁいい、早く行くぞ」

どうやらパーキングメーターの時間が迫っているようで、清貴さんは時計を気にしながら早足で歩いている。
私も合わせて歩こうとするが‐なんせ足の小指が擦れて痛い。少し靴擦れができてしまったらしく、踏み出す度にジクっとした痛みが回る。


「あの、清貴さん……」

「何?」

「靴擦れが痛いんで…先にどうぞ………」

先に行って車で待っててもらおうと、私は立ち止まった。


すると次の瞬間‐私の体が宙に浮く。

「ちょっ?ええっ?!」

背中と足に手を回されて、持ち上げられている。
つまり……お姫様抱っこ。

「暴れるなよ」

わりと重たいはずの私を、しっかりと抱えて歩いていく。
行き交う人の視線が集まり………ものすっごく恥かしい。それ以外の言葉がない。

「あの……清貴さん………」

「しっかりつかまっておけ。落とすぞ」

一瞬脅すかのように力が緩まり、思わず「ひぇっ」と声を上げてしまう。
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