稲荷と神の縁結び
やっぱりその顔をした!と私は少しだけ得意気になる。
「ひなやの最中みたいですよね。会社の近くの」

「味がそっくりすぎる」

「あそこは、ひなやの人が独立してできた店なんですよ」

「へっ?聞いたことないけど…」

「ホテルとか料亭に卸すのを主にしてるらしいんですよね。宣伝は一切してないみたいで」

「よく知ってたな」

「前に教えてもらったんですよ」

「へぇ、誰に?」

「か……………いやっ!あの……………」

しまった…これは内緒にしておかなければいけない話だ。しどろもどろになる私を、横目で一瞬邪険そうに見る清貴さん。


「……………前に、デートしてくれた人が居て、その人と」

何とか言葉を濁して、どうとでも取れる答えを導き出した。

「……へぇ、どんな人?」

「えっと……穏やかで優しい人でした。私のこともすごく気に掛けてくれていて、人望があって落ち着いた男性で……すごく好きな人でしたでしたね」

これ以上、どう答えればいいのだろうか…
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