稲荷と神の縁結び
そう悩んでいるうちに、信号で車が止まりブレーキがかかる。

「その人、独身なのか?」

「まぁ、一応そうなりますね……」

「その人と結婚したいの?」

次の瞬間‐ガッと肩が捕まれ顔を覗きこまれる。
さっきの距離と同じぐらい迫ってくる顔。ドクンと心臓が跳ね上がる。


「歳が離れすぎてるんで……対象外ですよ……」

何とか視線を反らして、言葉を絞り出す。
清貴さんはその言葉を聞くと、大きなため息をついてるようだ。

「お前にもそんな人が居たんだな…」

「し、失礼ですね………し、信号が変わりましたよ」

ちょうど信号が青に変わったのを確認すると、清貴さんはもう一度大きなため息をついた。
そのまま無言で、クラッチを操作して車を発進ささせる。

カチャっとクラッチを動かす手付き。
私はそれを見ながら…あのデートの事を思い出していた。


やっぱりそっくりなんだな、手付きも……運転している横顔の表情も、なんて。そんなことを思い出していたのだ。
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