稲荷と神の縁結び
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所々渋滞に捕まりながら、ようやくうちの神社に着いたのは…もう二時をとっくに過ぎた時間だった。
毎年のスケジュールであれば、神社の会館で行われている食事会という名の宴会の真っ只中であろう。



「いやーやっぱすごいよな、この大鳥居」

清貴さんが、うちのシンボルでもある大鳥居を見上げて呟いた。

「清貴さん、この鳥居の建て替え…いくらかかるかわかりますか?」

「そんな頻繁にするのか?」

「百年に一回するんです。その費用が…ざっと一千万」

「い…一千万………」

「正確に言えば、建て替えやら修繕費自体はその半分以下で済むんですよ。それに伴う行事云々で、軽くそれぐらいは出ていきます」

もはや私達は、この大鳥居を守るために働いているのではないか。そう思うこともある。


「前の建て替えが、二十年前。まだお祖父様が生きていた時で……その時の借金を返し終わったのいつかわかります?
たった三年前ですよ、三年前」

うちの家計がよろしくなかった事情は、主にこれだ。
ずっとお祖父様が、死ぬまでこれの借金を隠していた。
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