稲荷と神の縁結び
「それで……適当にほとぼり覚めた頃に、何か性格の不一致で別れたってことにしたいんだけど………」

「つまり嘘の片棒担げ、と。神職である自分に」

にっこりと笑うが‐後ろに影が見える笑み。
怖い怖い。

「担げってよりは………静観を貫いてて欲しい………」

担ぐとなると…尾ひれはひれも盛大についた話になりそうな気がして、余計に怖いです。

「じゃぁそうするけどさぁ」
そう言うと、圭ちゃんは大きなため息をついた。

「ようやくこはも『行けず後家』卒業できると思ったんだがなぁー」

「……どこに行かせる気だったのよ」

「や、だってこはみたいなのを家に欲しいって言ってたよ?昔」

「ん……昔………?」

「大学の頃」

……えっと、はい?と驚き目が点になる。

大学の頃、と言うと私が中学ぐらい、か?
当然ながら当時は面識なんぞ一切無かった筈なのだが……

「あ、清貴」

停めた車の前にある木に、清貴さんが退屈そうにもたれ掛かっているのが見えた。

「清貴ー、大学の頃うちの例祭来た事あったよな?言ってないんだ?」

圭ちゃんがそう言うと、清貴さんはギクリという顔をしている。

「いつか最終日に見に来てたって言ってなかったっけ?俺は忙しいから相手できなかったけど」
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