稲荷と神の縁結び
「あ、やりますよ」

私も立ち上がって食洗機の方に。
しかし清貴さんは気にせずに食器を詰めている。

「こはる準備まだだろ?」

「そうですけど…」

「じゃ、こはるが詰めたとして、その詰めた時間分貰おうか」
食洗機に全て食器を詰めた清貴さんは、ピッとスイッチを押した。
次の瞬間‐振り向いて私の顎をクイッと持ち上げる。

「ちょっと……あの………」

次の言葉を言い終わる前に、顔が近付いてくる。
私は咄嗟に目を瞑ると‐唇に柔らかい感触が走る。湿ったそれは中の方まで押し入ってきて、私の思考の全てを奪う。


「……はい、ここまで」

きっと触れていた時間は、数十秒にも満たないはずだ。
それでも私の全てを奪うのには充分で。唇が離れると、腰が抜けてその場に崩れるようにへたりこんだ。


「あのさ…もうちょっと慣れてくれないか……?」
チラッと見上げると、ため息をついて見下ろしている清貴さんが居た。


「無理です!無理です!!」

顔が火照って熱い。今すぐ顔から火が噴き出しそうだ。


「ま、教えがいがあると、プラスには解釈しとこうか……」

教えがいって何が?!
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