稲荷と神の縁結び

「じゃあしばらくは、こはるを定時に上がらせて欲しいんですが」

「勿論了解ですよ。何なら今日も休ませましょうか?」

「それは有沢さんが困るでしょう?迎えに来ますので、よろしくお願いします」

そしてさっさと踵を翻して去っていく清貴さん。
私はポカンとその後ろ姿を眺めている。
何か色々、私が知らない事実も沢山出てきた気がするのだが……。


「いいじゃないの。愛されてるねぇこはるちゃん」

有沢さんは私の肩をポンと叩く。ニコニコと笑顔を浮かべながら。

「ちなみに…具合的に清貴さんのどの辺が、ですか?」

私は普段、会社に居る時には全く愛は感じていない。あの罵倒のどこが愛なんだ。


「ま、気付いてないところがこはるちゃんのいい所であり、清貴君が苦労するところねぇー」

いや、全く持って意味がわからないんですけど!
相変わらず頭にはてなマークを浮かべている私を見て、有沢さんは肩を竦ませて笑っていた。
< 228 / 233 >

この作品をシェア

pagetop