稲荷と神の縁結び
猛烈に、明日会社を休みたい。
行くのが怖い。


「ていうか。日程とか何にも決まってないに何で言うんですかっ?」

「決まってないのはお前が昨日寝てたからだろ」

いや、確かにそうなんですけど。


「結婚辞めんなら、結納金返してもらうことになるが……」

「いやいや!それだけは!!」
私は首と手をブルブルと震わせる。
そうなると確実にまずい。二百万が。


二百万………って…あれ………よく考えれば。私は二百万でこの人に買われたっていうことだよな。
いや、私は買われた身なのだから……こんな生意気な口を聞いて良いものなのだろうか?

そう思うと、風船が萎むように…一気に気分が萎んでいく。



「おい、こはる?」

「何でしょう?ご主人様」

そう言った瞬間‐清貴さんは『ブッ』と吹き出した。

「俺にそんな趣味はない」

「いや……だって……………」

私は『買われた身』じゃないですか。
そう言いかけたところで、信号に引っ掛かり車が止まる。

すると清貴さんは‐手を私の頭の上に置いた。

「ま、買われたと萎縮されんのは嫌だな」

そしてそのまま、頭をグリグリと撫で回す。

「俺が買ったのは……こはると一緒に居る未来を買ったんだ。
自分自身を買われた、なんて思わないでくれ」

< 230 / 233 >

この作品をシェア

pagetop