稲荷と神の縁結び
二年前。
思ったよりフォト事業が好評で、一部店舗でしか行ってなかった前撮りを全国で始めることになった。それで本部の人手が足りなくなり、私は本部の方に移動した。それはフォト事業を仕切っていた有沢さん直々の指名だったのだ。


「…別に、言ってくれても。断ったぐらい言ってくれてもいいじゃないですか。
まさか彩馨側に寝返るとでも?」

「そうじゃないけど…なんだ。本部の仕事初めてだし、集中して欲しかったんだよ。余計なことは耳に入れたくなかったんだ」

「そんなことで……」

「でも実際、すぐに全国回ったりとかで余裕なかっただろ?」

確かにあの頃は出張やら研修会開いたりなどで、週に二日は出張で飛び回っていた。尚且つちょうど夕湖ちゃんの妊娠時期とも被り…まぁ、ずっとどったんばったんしていた記憶がある。

「バイヤーの件、耳に入れなかったのは…悪かった。なるべく親父や彩馨側と接触させたくなかったんだよ」

「別にそんなの有沢さんが居るし大丈夫じゃないでしょうか?有沢さんガンガン言い返しますし」
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