偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「どうぞ、僕の甘えベタの奥さん」
クスクス笑いながら、わたしを車の助手席に座らせた。
尊さんが連れてきてくれたのは、フレンチレストランだった。
川久保邸のほど近く、高級住宅街の都会の喧騒から抜け出た場所にある石造りの洋館前に車を止めると、中からコンシェルジュが出てきて「いらしゃいませ、川久保様」と出迎えてくれる。
「車をお願いします」
「かしこまりました。本日はごゆっくりお過ごしください」
入口に立っていた初老の男性が、個室へと案内してくれる。
「川久保さま、お待ちしておりました」
「久しぶりなので、楽しみにしてますよ」
奥まったところにある個室に案内される。テーブルには銀器や皿が美しくセッティングされていた。
「ここはね、川久保家の御用達の店なんだ。だから那夕子も連れてこないといけないとずっと思ってた」
さらりとわたしを川久保家の一員だと言った。そう思ってくれ行動してくれることに喜びを感じる。
「ありがとうございます。すごく楽しみです」
「たくさん食べて。ここは基本コースなんだけど、メインはどうする?」
「どうしよう……どれも美味しそう。芝エビかぁ、でも牛肉の赤ワイン煮込みも絶対おいしいだろうし……どうしよう」
メニューをじっと見ていても決まらない。それなのに尊さんは、そばで控えていたコンシェルジュに注文してしまう。
「僕は、サーモンを。彼女には芝エビと牛肉を」
「えっ? わたしそんなにたくさん食べられませんよ」
「ほら、また遠慮して。大丈夫だよ。きちんと一皿にしてくれるから、伊達に常連じゃないんだから、ね?」
尊の言葉にウェイターは、しっかりとほほえんだ。