偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「渡せなかったら、家までここを不自然に膨らませたままになるところだった」
言われてみれば、彼の左胸の辺りが若干膨らんでいたような気もする。
自嘲気味に笑った彼が箱を開くと、そこにはシンプルな一粒のピンクのダイアモンドのネックレスが輝いていた。彼が手にとると、ちょうど日の光があたってきらめく。
「わぁ、素敵」
その光景に思わず声をあげた。
「気に入ってくれてよかった。妻に指輪も買っていないことを、つい先日気がついてね。でも那夕子は看護師だから、きっと指輪よりもこちらのほうがいいかなって」
そうやってわたしのことを考えて、プレゼントを選んでくれたことがなによりもうれしいことだ。
一緒にいない間も、気がつけば尊さんのことを考えていることがあった。同じように彼もわたしのことを考えてくれていたのだ。
わたしは夢中になってネックレスを見る。
ネックレスはもちろん素敵なのだけれど、それ以上に彼の思いの現れだと思うととても大切に思えた。
「ショーウィンドウを見て、ピンと来たんだ。それまでジュエリーなんてまったく気にも留めなかったのに、君のおかげ新しい経験がたくさんできている。ほら、後ろを向いて」
わたしは素直に彼に従った。
すぐにネックレスが首元に落とされて、彼が背後から金具を止めてくれた。