偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「あっ、わたしがします」
「いいから、那夕子は探索を続けて。気が済んだらこちらに来ればいいから」
尊さんは慣れた手つきで、茶葉を急須に入れている。
わたしは好奇心に負けて、彼の言う通りにさせてもらうことにした。
まるで旅番組で紹介されているような豪華さにわくわくしたわたしは、はしゃいだ気持ちのまま奥にあった襖を勢いよく開いた。
「ここは、なにがあるの……っ!」
パタンと襖が開く音と同時に、目に入ってきたのはベッドがふたつ並んだ寝室だった。
きちんと整えられたベッドはとても気持ちよさそうだ。けれど、今のわたしはベッドを目にしたことで、一瞬にして体が固まってしまった。
意識するな……というほうが無理だ。今日わたしは尊さんとふたりっきりでこの部屋で朝まで過ごすのだ。この部屋でふたりで……。