偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「わぁ、すごい。広いですね」
川久保邸で暮らしているので、豪華さには馴れていたつもりだった。けれど、尊さんが用意してくれていた部屋は、ホテルの一室とは思えないほどの広さだった。
白とゴールドを基調とした高級感が溢れる部屋に入ると最初に目に入るのは、ゆったりとした大きめのソファだ。
ミニキッチンや書斎なども備え付けられており、奥にある開けられた扉の先には、大きなベッドが見える。
人生で始めて足を踏み入れた豪華な部屋をあちこちと見て回る。壁一面のガラス窓に張り付いて、眼下に広がる夜景を見下ろす。
「すごい眺めですよ。ずーっと向こうまでキラキラ……っ」
背後からわたしの腰に腕が回され抱きしめられる。
「緊張してる?」
「はい。ばれていましたか?」
わたしはさっさと認めてしまう。
「温泉のときと、一緒だったから。不自然にはしゃぐ姿もかわいいけどね」
やっぱり、彼にはお見通しだったのだ。
「すみません。少し落ち着きます」
「かまわないよ。そういう初々しい君を見るのは、とても喜ばしいことだから」
彼はきっとわたしがなにをしても、許してくれるのではないかと思ってしまう。それほどいつも甘やかしてくれる。
ガラス越しに、尊さんと目が合う。するとニッコリとほほ笑み、わたしの耳に小さく唇を落とした。