偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「夜景もいいけど、こっちに来ない? 那夕子に話したいことがある」
「改まってどうしたんですか?」
尋ねたけれど、彼は少し困った顔をして笑っただけだった。
わたしは導かれるまま、ソファに座る彼の隣に腰を下ろした。
わたしが座るとすぐに、彼が膝の上に置いていたわたしの手に自らの手を重ねた。不思議に思い、彼の顔を見る。
少し表情が固いように思うのは気のせいだろうか。
彼が一度きゅっと、唇を引き結んだあと、決心したように口を開いた。
「僕は、君に謝らなければならないことがある」
まさかそんな話だとは思っておらず、みぞおちのあたりが急激に冷え込んでいくのを感じた。
わたしの表情が固くなったのを見て、尊さんはわたしの手をぎゅっと握った。
「これ、見覚えがない?」
彼がスーツのポケットから時計を取り出した。
「ナースウォッチですか? あ、これ……」
それは逆さの文字盤にクリップがついている。文字盤の縁は黄色で彩られていた。
「以前同じものを使っていたんですよ。でもある人に……えっ?」
驚きで目を見開く。