偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
ギシリとふたりを受け止めたベッドが音を立てる。キングサイズの真ん中にふたりでもつれあうようにしてキスを交わす。
「っ……ん……はっ」
今まで尊さんとは何度かキスをした。唇を重ねるだけの軽いかわいいキス。気持ちがたかまって、何度も繰り返した情熱的なキス。
でもこのキスはそれまでのどれとも違う。お互いの存在を確かめ合い、思いを交わしてひとつになろうとする――そのための始まりのようなキスだ。
尊さんは器用にもキスをしながら、わたしのドレスを脱がしていく。
「このドレスを着せたときから、こうやって脱がすことを考えていたんだ。ずっと君が欲しくてたまらなかった」
熱い手のひらがわたしの形を確かめる。髪をなで耳をくすぐり頬をさする。キスの激しさからは想像もできないくらい、そっとやさしく。
くすぐったいような、でもそれだけじゃない。ビクンと体を跳ねさせ、捩るとなぜか彼がうれしそうに笑う。
「すごく素直だね」
自分でもわかっていた。彼に触れられて体が反応していることを。だから言葉にされると恥ずかしくなる。
「そ、そういうことは……」
「言わせて欲しい。君の恥ずかしがる姿は、とてもかわいいから」
目を細めた彼は、わたしの抗議を封じ込めるようにして唇を重ねた。唇を割って入ってきた舌に、わたしの舌がからめとられる。
熱くて溶けてしまいそう。体の奥から湧き上がってくる熱にうかされる。
彼から与えられるもの以外、なにも感じられないし考えられない。彼の大きな手のひらがわたしを優しく追い詰めていく。
普段は自分しか知らない場所を、次々に暴かれていく過程は恥ずかしさと共に、彼にすべてをささげているという気持ちがないまぜになり、それもまたわたしを興奮させた。
「ん……尊さんっ」
自分の体がこんなにも感じやすいなんて、今まで知らなかった。
触れられるたびに広がる快感に、声を上げる。彼の指がわたしを高みに連れていく。けれどひとりでは嫌だ。一緒がいい。
わたしは激しく首を振る。
「一緒に。尊さん……もう」
わたしが話をしている最中も、わたしの体をいたずらに撫でる。
感じすぎて涙の膜がはった目で彼を見ると、額に汗をにじませ余裕のない表情をうかべていた。
「先に那夕子に気持ち良くなってほしかったんだけど。そんなふうに可愛くおねだりされたら、我慢なんてできない……っ」