偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~


「なにって……お掃除ですけど」

「お掃除! どうして那夕子様が……そのようなことを」

 ほうきを取り上げてられてしまう。

「那夕子さまって?」

 花屋の女性も秋江さんの様子に驚いたようだ。

「こちらの方は、尊さまの妻。川久保家の若奥様です」

「わ、わか――」

 花屋の女性が驚く前に、わたしが声を上げた。

「若奥様って、わたしが?」

 自分を指さしたわたしに、秋江さんは力強くうなずいた。

「左様でございます。色々ご事情があるのは存じ上げておりますが、尊さまからは若奥様として接するようにと言われておりますので」

 まさか秋江さんにまで、協力を仰いでいたなんて思わなかった。

「でもわたしはおばあ様の――」

「とにかく、那夕子さまはこの家の大切な方ですから。このようなことはなさらないでください」

 ほうきを突きつけるようにして、言い渡された。

「は……はい。以後気をつけます」

 秋江さんのことを優しいと思っていたけれど、この家を取り仕切っているだけあって、逆らえそうにない迫力だ。きっとこちらが本来の秋江さんの姿なのだろう。
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