偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
巻き込まれた形になった花屋さんは、どうしていいのか戸惑っていた。
「すみません、邪魔をしたみたいで。続けてくださいね。出来上がりを楽しみにしています」
ここにいては気を遣われるだけだと思い、そそくさと退散することにした。
尊さんがおばあ様のために、ここまで根回ししていたとは。
この家では完璧な〝若奥様〟を演じなくてはならないのだと、改めて実感した。
「はぁああ」
大きなため息がでる。午前中だけでもぐったりと疲れてしまった。
午後の陽射しの差し込むおばあ様の部屋では、白衣の男性が診察をしていた。
彼は川久保家のかかりつけの主治医で、中村(なかむら)先生。尊さんとは中学高校と同級生だったらしく、この家には昔から出入りしていたらしい。
そういった縁から、この家のおかかえ医師としてお世話になっているようだ。
彼は部屋に入るなり、わたしのことをチラッと見ただけで、とくに気にする様子もなく診察を始めた。もしかしたら、尊さんが事前に説明していたのかもしれない。
「豊美さん、ごはんはおいしい?」
中村先生は聞き取りやすいように、ゆっくり声をかける。