偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「そんな年寄りに話すみたいにしないでちょうだい。急に老けた気がするわ」
眉間に皺を寄せたおばあ様を見て、中村先生ははははと笑った。
「十分老人だから、無理しないこと。いい?」
「わかっていますよ。那夕子さん……先生を玄関までお送りして」
「はい」
もともとそうするつもりだったわたしは、部屋を出た中村先生の隣を歩いた。
この中村先生、尊さんに負けず劣らずかっこいい。身長は尊さんと同じくらい、百八十センチ近く。黒髪から覗く一重瞼はワイルドな印象で一瞬とっつきにくそうだったが、彼がおばあ様を診察している姿を見ていると、とても丁寧な人だということがうかがい知れた。
「で、君は誰なの?」
話を切り出す前に、向こうから声がかかる。
「尊さんからお聞きになっていませんでしたか?」
てっきりさっきの様子から事情を把握しているものだと思っていた。
「いや、ただあの場ではなにも聞かないほうがいいと思っただけ」
なんと勘の鋭いことか。