偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~

「これ、今までに豊美さんの病状説明で使った資料。尊には全部渡してあるけど、看護師である君が見ておいたほうがいいと思う」

「ありがとうございます」

 思いのほか丁寧な字で書かれている。

「職業柄理解できるとは思うが、わからないことがあれば連絡して。今日は診たところでは、落ち着いているようだけれど。これ、連絡先」

 クリニックの住所とスマートフォンの番号が書かれた名刺を渡された。

「わかりました。ありがとうございます」

 わたしの仕事はおばあ様の看護をすることがメインだ。この資料をしっかり読み込んで、病状について把握し、病気について理解を深めなくては。

 資料を手に決意を新たにしているわたしを見た中村先生は、クスクスと笑った。

「こんなことに巻き込まれて、君もたまったものじゃないな」

「まあ、乗りかかった舟とでもいいましょうか……」

 同情めいた言葉をかけられて、あははと乾いた笑いを漏らす。

 一階に降りると秋江さんが先回りして、玄関の扉を開けてくれている。

「ずいぶんお人よしなんだな」

 自分でもそう思う。しかし正直に口にすることがはばかられ、苦笑いで返す。

「ははは。尊も、うまくやったもんだな」

「尊さん……?」

 今どうして、彼の名前が出てきたんだろう。

「いや、なんでもない。頑張って」

 中村先生はわたしの背中をポンッと叩くと、車に乗り帰って行った。

「どういう意味?」

 首を傾げたわたしは資料を一度部屋に置くと、おばあ様の元に向かった。

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