偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「そんなに熱心に何を読んでいるんだい?」
離れにある尊さんの部屋のリビングで背後から声をかけられて、はっとして顔を上げる。
「尊さん! お戻りだったんですか? すみません、お出迎えするべきだったのに」
まったく気がつかなかった。時計を確認すると、まもなく二十二時になるところだった。
「いや、帰宅時は気にしなくてもいいよ。祖母も休んでいるだろうし、日付が変わることも珍しくないからね」
尊さんはネクタイをゆるめながら、わたしの持っている資料を覗きこんだ。
「今日、中村先生の往診日で、おばあ様のこれまでの経過を知るために資料をお借りしたんです。尊さんも同じものをお持ちだと聞きました」
「ああ……そうだった。僕から説明するべきだったよね。大切なことなのに、すまない」
「いえ。直接診察に立ち会って、医師から話を聞いたほうがいいかなと思っていたので、大丈夫です」
「そうか。それでものすごく真剣な顔をしていたってわけだ。ここ、皺が寄ってる」
尊さんがわたしの眉間を人差し指でツンッとつついて、笑う。
「……っ」
どんな顔をしていたのだろうか。恥ずかしくて彼が触れた場所を照れ隠しで触ってごまかした。
「あ、あの……わたしおばあ様の介護計画のようなものを立ててるんです。出来上がったら、尊さんに提出しますね」
思いつくままに書いたレポート用紙を見せる。