偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「そうか、そこまでしてくれるなんてありがとう。僕の奥さんは仕事熱心だな」
「そ、そんなっ! 当たり前のことですから」
褒められるようなことをしたつもりはない。仕事として受けているのだから、当然なのに。
そんなに優しい目を向けられると、ドキドキしてしまう。せっかく仕事モードだったのに、完全に意識が尊さんの方へ向かってしまった。
彼はわたしの書いた殴り書きのレポート用紙を読み込んでくれている。こんなことなら、もう少し丁寧に書くんだった。
そこではたと気が付いた、尊さんがまだスーツのままだということに。仕事で疲れて帰ってきて早々、迷惑だったのではないだろうか。
「すみません。お疲れのところ、明日以降お時間のいいときに改めたほうがいいですか?」
「ん? 別にかまわないよ。でも、こうやって気遣ってもらえるのは、うれしいかな」
口元を少し綻ばせただけで、彼はそのままわたしの計画書を精査している。
「ん、これは?」
彼が指さしたのは、【お花見】と書いた箇所だ。
「それですね、おばあ様に庭の桜の木の話を聞いたんです。それで、お花見にお連れできればどうかなと思ったんです」
「花見……ね。確かに最近は昔みたいに出歩くことが少なくなったからな」
体が不自由になると、外出……ましてや遠出となると、難しくなる。