偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「わたしがいる間だけでも、おばあ様が喜びそうな場所にお連れしたいな、と思って。今日お話ししていて思ったんですが、おばあ様はお元気だったころ、旦那様とたくさんご旅行に行かれたとか。きっと今でもお出かけなされば喜ばれると思うんです」
「たしかに祖母は、すごくアクティブな人だった。きっと今でも好奇心は旺盛だと思う。僕がそこまで気をまわしてあげられていなかったな。反省しなくては」
「仕方のないことです。介護はご家族だけで背負われるものではないですから。プロの手を借りるのも大切なことです」
大切な家族だからこそ、一生懸命になってしまう。しかしそれがご家族の大きな負担にならないようにしなくてはならない。すごく難しい問題だ。
「じゃあ、僕は幸せ者だ。妻がこうやって一緒に寄り添って悩んでくれるんだから」
「つ、妻って……わたしは、看護師としての立場から言ってるんですよ」
「それでも、親身に考えてくれてありがとう」
本当に当たり前のことをしているつもりだ。それでも「ありがとう」と感謝の言葉をもらうとうれしい。
にっこりとほほ笑まれて、彼の手が伸びてきた。
笑顔だけでも破壊力抜群で心臓が痛いくらいなのに、もし触れられてしまったら……。
「あ、あの! それでご相談なのですが」
「ん? なにかな。なんでも言って」
「車をお借りできないかな……と思って。尊さんの車を運転するのは緊張するので」
彼の車はツーシーターで、足の弱いおばあ様を乗せるのには向かない。そしてなによりも高級すぎる。ぶつけたらどうしようと、気になって運転できそうにない。
「運転手さんに言えば、車を出してもらえるけれど、それではダメということ?」
わたしはうなずいて理由を説明する。