偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
そして三日後の昼下がり。わたしは驚愕に口をぽかんと開けていた。
「な、なんですか……これは」
川久保邸の来客用の駐車スペースに、ドイツの有名自動車メーカーの赤い車が届けられた。
「あら、とってもかわいいわ。ね、秋江さん」
「そうですね、那夕子様にぴったりです」
おばあ様と秋江さんの会話を横で聞きながら、わたしは頭をかかえてしまう。
なんで、こんなことになっちゃったの……?
わたしは車をレンタルしたいって、言ったはずだ。それなのにどうして今日、この赤い高級車がこの家に届いたのだろうか。
「あの、この車は?」
「ご主人さまからご依頼いただきまして、お持ちいたしました」
わたしよりも少し若いだろうディーラーの男性は、ニコニコと笑顔でわたしに鍵を差し出した。
「奥様を驚かせたかったということですので、ご主人さまのサプライズは大成功ですね」
ええ、とっても驚いていますっ!
だからにっこり鍵を差し出されても『ありがとうございます』と受け取るわけにはいかない。
「あの、少々お待ちくださいね」
わたしは皆に背を向け、自分のスマートフォンを取り出すと、尊さんに電話をかけた。
緊急事態でない限り連絡はしないようにしていたが、今はそんなことを言っていられない。