偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~

『祖母のことだけじゃないよ。那夕子も僕の大切な人なんだから。何かあったときに僕を後悔させないでほしい』

「えっ……な、なんで、わたし?」

『さっきも言った。大切な人だと』

 優しい声が耳に響く。

 その言葉に嘘がないのが伝わってきて、うれしくて胸がキュッと小さく音を立てる。

 尊さんは少し、かりそめの妻にやさしすぎるのではないだろうか。

『と、いうことで。ドライブ楽しんで。僕もできるだけ早く帰るから』

 彼が仕事中だということを、やっと思い出した。これ以上長引かせるわけにはいかない。

「わかりました。大切に使わせていただきます」

 彼のやさしさに結局のところ、わたしが折れる形になってしまった。

 振り向くとおばあ様はうれしそうに車の傍らに立って、秋江さんに写真を撮ってもらっている。

「那夕子さん、一緒に写って! 尊に見せましょう」

「はい。今、行きます」

 わたしは笑顔で駆け出した。

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