偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「それでおばあ様のリクエストでファミレスに行ったんです。ドリンクバー初体験みたいで、大変喜ばれていました」
わたしは毎日の日課である、おばあ様との今日の出来事を話していた。いわば業務報告のようなものだ。
「近くにいた小学生が、ドリンクをミックスしているのを見て真似てみたり、本当におばあ様の好奇心はすごいですよね」
彼の上着を受け取り、ハンガーにかける。
彼は最初はこういったお世話めいたことは拒否していたのだけれど、わたしが『妻の務め』だと言うと、任せてくれるようになった。
少しは彼に対してどういう行動をすればいいのかわかってきたような気がする。
確かにさらっと強引ではあるのだが、わたしが本当に嫌がることは決してしない。最初の日こそ不可抗力(?)で、ベッドを共にするというアクシデントがあったが、それ以降、彼は書斎で、わたしは寝室で別々に寝ている。
懸念していたスキンシップうんぬんについては、いってらっしゃいのキスをわたしからしてほしいという要望をもらっているけれど、なんとか今のところうまくごまかしている。まあ、尊さんの方からしている事実はあるのだけれど。
どちらかといえばわたしばかり、あれこれしてもらっていて申し訳ない。尊さんもおばあ様も秋江さんも、その他の屋敷の人たちもとてもわたしに良くしてくれる。
だからできることは、なんでもやろうと思って申し出ている。
「ドリンクバー? それは僕もまだ未経験だな。祖母に先を越された」
「えっ? ドリンクバーご存じないんですか」
「そんなに驚かれると、少しショックだな。まるで僕が世間知らずみたいじゃないか」
いや、十分そうだと思うけれど……世間知らずというか、浮世離れというか。