偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「すみません、そういうつもりじゃないんですけれど……プッ……ふふふ」
すねた様子の尊さんがかわいく見えて、思わず吹き出してしまった。
「祖母ばかりズルイな。次は僕と一緒に行かないか?」
「え? ドリンクバーですか? いいですよ。そんなところに行きたいなんて、おかしな人ですよね」
尊さんのような大人の落ち着いた人が、ドリンクバーの前に立っているのを想像してミスマッチにおかしくなり、笑いが止まらなくなる。
「君と色々なところにでかけたい。ただそれだけだよ」
「……え⁉」
それまで止まらなかった笑いが、彼の意味深な言葉を聞いてピタッと止まった。
「だから、お花見は僕も一緒に行く。楽しみだな」
にっこりとほほ笑まれたわたしは「はい」と短く返事をすることしかできないほど、彼の言葉に動揺していた。
おばあ様の部屋は、午後の陽射しが差し込んできていて明るい。その中で、中村先生の週に一度の診察がなされていた。
「うん。いいよ。ここ最近、顔色もすごくいい。豊美さん、若返ったんじゃないの?」
まるで自分の祖母かのように話をする中村先生に最初は驚いたけれど、二度三度とその様子を見ているうちに、そう気にならなくなった。おばあ様は尊さんの友人である中村先生もとてもかわいがっているのがわかったからだ。
白衣のポケットに聴診器をしまう先生を、おばあ様がからかう。
「若返ったなんて、うれしいわ。中村くんのお嫁さんに立候補しようかしら」
「勘弁してくれ……」
本当に嫌そうな顔を見せた。それを見て思わず吹き出しそうになったのを我慢する。