偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
中村先生のクリニックには老若男女問わず患者さんが集まっていた。クリニックでの診療は午前中のみ。それでも三島紀念病院の医師が担当するのと変わらないくらいの、いや、それよりも多いくらいの診察をこなしていると思う。
「おっしゃる通りだと思います。患者さんがみんな中村先生を信頼しているのがよくわかりました。診察も的確で――」
「ストップ」
「……え?」
尊さんの大きな手が、わたしの顔の前に差し出された。視界が彼の手のひらでうまる。
「那夕子、中村のことほめすぎ」
なにを言っているのだろうか?
めずらしく不機嫌になった尊さんの顔を見て、きょとんとしてしまう。
まだ理解できないわたしに、尊さんはすこし眉を上げて言い含めるようにして話して聞かせる。
「那夕子は、僕の妻だろう。それにもかかわらず他の男を褒めるなんて。聞いていて気分が良くない」
むすっとした表情を浮かべる尊さん。
わたしはおかしくなって吹き出してしまう。
「なに言ってるんですか? ヤキモチみたいに聞こえますよ」
あははと声を上げて笑う。
「ヤキモチだ」
彼の言葉に、それまで笑っていたわたしは固まった。