他人と何度も重ねたくちびるで、愛して



許せない。私だけをみて、私だけを愛して。



「いっくん……っ」



女の人を突き飛ばして、いっくんにしがみつくように……抱きつく。



多分、あの人は……先輩だ。



「咲香!?帰ったんじゃ……っ」



うわずる声。これ、私だけに向けられているんだ。



それが嬉しくて、彼の腕をつかんでいる指から、伝染するように……体中が、熱くなる。



「ねぇ、なんで?なんであの人と抱き合ってるの?キスしてるの?私のこと、愛してるんじゃないの?ねぇ、なんで?



ねぇ、ねぇ、ねぇ!!」



しがみついたそのまんま、顔をあげ、早口でまくし立てる。
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