お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。

「うん。俺から言わせれば不安病だね。カイラ様は自分の出自をひどく気にしていらっしゃるから。たかが伯爵令嬢のクロエにまでびくついているからね。ロザリー嬢は癒し系だから、うまくやってくれると助かるよ」

「はあ」

だが、ロザリーも今までに病気の人間を相手にしたことはないのだ。まして夢遊病という病気についてもあまり知識がない。会う前にそれだけでも知っていなければ失礼な気がしてきた。

「ケネス様。カイラ様の病気について調べられる本はありませんか? 基本的なことだけでも知りたいんですけど」

「お、いい兆候だね。じゃあ関連する本を後で部屋にとどけるよう、侍女に言っておくよ」

「……お願いします」

これ以上頭に入るだろうか、と心配にはなったが、ザックの母親に失礼なこともしたくなかった。
ロザリーはザックの力になりたいのだ。
彼のたくさんある心配事のたったひとつでもいいから、解消してあげれたら嬉しい。

「頑張らなきゃ」

意気込みすぎて不安になったが、後ほど届けられた本には、該当箇所にちゃんとしおりが挟まれていて、なんだかんだ心遣いをしてくれるケネスに、ロザリーは心の底から感謝した。

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