お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
幼いときに父が死に、なにも出来ないレイモンドはそこに仕事終わりの母を迎えに行くことを日課としていた。
ある日、犬のリルが店主に拾われたときは嬉しかった。何せ忙しい切り株亭の人間は散歩ができない。
『レイモンド、頼んだぞ、リルの散歩はお前の仕事だ』
お金のもらえるような仕事ではなかったが、なにか役に立つことがうれしかった。
のちの義父となる切り株亭の店主は、母と再婚する前から、レイモンドにとって父親同然の人だったのだ。
だから、再婚という話になったときも、自分だけの母ではなくなることに葛藤はあったが、相手が彼であることに不満はなかった。
「……そういや、あの人俺と血がつながってないんだっけ、って感じですね。そのくらい、実の息子のように育ててもらいました。血のつながりよりも、一緒にいた時間や、大切に思う心。それがあるから、家族なんじゃないかと思ってます」
それは心からの本心だ。
例えばクリスに対しても、他の男の子供だという事実よりも、あの子が自分に懐いてくれているという事実が、レイモンドの心を満たしてくれている。
「お前、いいやつだなぁ」
肩をぐっと組まれて、しみじみと言われるのは嬉しいが、手が止まってしまう。
「まあそんなわけなんで、協力お願いします」
「もちろん。お前の一途な恋を俺たちがかなえてやるよ。なあ! その代わり無事奥さんになった暁には、友人を紹介するよう頼んでくれ」
妙に協力的な料理人の面々は、実は半数以上が独身だ。
お屋敷の料理人というのは、思った以上に出会いが無いのである。
ある日、犬のリルが店主に拾われたときは嬉しかった。何せ忙しい切り株亭の人間は散歩ができない。
『レイモンド、頼んだぞ、リルの散歩はお前の仕事だ』
お金のもらえるような仕事ではなかったが、なにか役に立つことがうれしかった。
のちの義父となる切り株亭の店主は、母と再婚する前から、レイモンドにとって父親同然の人だったのだ。
だから、再婚という話になったときも、自分だけの母ではなくなることに葛藤はあったが、相手が彼であることに不満はなかった。
「……そういや、あの人俺と血がつながってないんだっけ、って感じですね。そのくらい、実の息子のように育ててもらいました。血のつながりよりも、一緒にいた時間や、大切に思う心。それがあるから、家族なんじゃないかと思ってます」
それは心からの本心だ。
例えばクリスに対しても、他の男の子供だという事実よりも、あの子が自分に懐いてくれているという事実が、レイモンドの心を満たしてくれている。
「お前、いいやつだなぁ」
肩をぐっと組まれて、しみじみと言われるのは嬉しいが、手が止まってしまう。
「まあそんなわけなんで、協力お願いします」
「もちろん。お前の一途な恋を俺たちがかなえてやるよ。なあ! その代わり無事奥さんになった暁には、友人を紹介するよう頼んでくれ」
妙に協力的な料理人の面々は、実は半数以上が独身だ。
お屋敷の料理人というのは、思った以上に出会いが無いのである。