お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。


それから三日後、大きな馬車が切り株亭の入り口に横づけされた。
勢いよく中に入ってきた人物を見て、ロザリーは懐かしさで興奮して鳥肌が立った。

「ご、ご主人様!」

彼女の前世である犬、リルのご主人様である。
もちろん、当時よりは老け込んでいるが、優しそうな目尻は変わっていない。
ご主人様ことアランは、朗らかにレイモンドに笑いかけ、その後ぴょんぴょん飛び跳ねてしまいそうなロザリーに目をやる。

「悪かったな、レイモンド。突然任せきりにして。そしてこの子だな? 新しく雇ったロザリーちゃんというのは」

かつてのご主人様の笑顔に、ロザリーのテンションはマックスだ。うれしすぎてお尻がムズムズしてしまう。
じっとしてられなくて体を上下に小刻みに揺らした。

(知ってます知ってます。この笑顔。リルの記憶よりだいぶ老けちゃってますけど、間違いなくご主人です)

「お久しぶり……じゃなくてはじめまして!」

「ああ。……なんか、妙に懐かしい感じの子だね?」

(それはそうですよ! リルですよ、リル。ご主人様に会えてうれしいです!)

アランはあまりにニコニコしているロザリーを不思議そうに眺めた。ロザリーとしては体を押し付けてスリスリしたいくらいだが、人間の姿でそれをやっては多方面に誤解を招く。
せっかくの感動の再会だが、ロザリーがひとり心の中で盛り上がって終了だ。
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