お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。

「ありがとうございます、チェルシーさん」

「ぽやっとしてるから心配だわ。レイモンド! ロザリーを見捨てちゃだめよ」

「わかってるよ。人聞きの悪いこと言うな」

レイモンドは、心配のあまり怒り気味なチェルシーを安心させるように言い、ランディにも頭を下げた。

「頼むな、ランディ。親父を助けてやってくれ」

「あたり前だろ。ちゃんとオードリーを連れて帰って来いよ」

レイモンドとランディが固い握手を交わしているのを眺めていたロザリーは、うしろからキュッと抱きしめられた。ミルクっぽい優しい香りはチェルシーのものだ。

「あなたはひとりじゃないからね。無茶しないのよ、ロザリー」

本気で心配してくれる存在がいてくれるだけで、自分を大事にしようと思える。

「チェルシーさん、大好きです」

ポソリと言って顔を上げたら、涙目のチェルシーと目があった。
優しくて強くて格好いいチェルシー。ひとりっ子だったロザリーにとって、チェルシーは理想のお姉さんだ。
離れがたくて、ロザリーからもぎゅうっと抱き着いて別れを惜しんだ。
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