お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。


王都までは馬車で六時間。しかし、乗合馬車は一気に王都まで行くわけでもない。途中乗り換えもあるので、途中の村で宿を取る。少しでも節約したいロザリーたちは、それぞれ男女別の大部屋で泊まることにした。

「明日は寝坊するなよ。みんながみんな善人じゃないんだからな。貴重品は肌身離さず持つこと」

「はぁい」

大部屋の前でくどくどと注意をされる姿は完全に親子だ。

「はい。……レイモンドさん、お父さんのようですね」

ロザリーが思ったままを言うと、レイモンドはさすがに嫌そうな顔をした。

「お前、俺をいくつだと……。いや、まあ、たしかにちょっと過保護なことは認めるが」

レイモンドは、ロザリーの前世が犬であることを知っている唯一の人物だ。そのため、レイモンドは彼女に保護者的な感覚があるし、ロザリーは彼に対して飼い主に対するような愛着がある。
親子でも恋人でもないが、ふたりの間には固い信頼関係があるのだ。

「嬉しいんですよ。両親を亡くした私が、いろんな人にこんな風に心配してもらえるの、幸せなことです」

「もうお前は俺の身内だよ。……とにかく、明日には王都につけるからな」

頭をポンポンと撫でられて幸せ気分になりながらロザリーは大部屋へと入った。

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