お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。

「そうだな。……気持ちが変わったのは、親父が死んだときかな。俺とおふくろ、ふたりだけになって。俺は小さかったし、途方に暮れたよな。おふくろは葬儀が落ち着いてすぐ働きに出て、俺には心配するなっていうばかりだったし。そしたら、オードリーが言ったんだ」

『これからは、レイモンドがお家のことをするといいわ。おばさんがお仕事を頑張れるように』

「……ただ甘えることしか知らなかった俺は、目から鱗が落ちたような気がしたんだよ。そうか、俺にもできることがあるって、そう思えたのは嬉しかった。目の前が真っ暗闇だと思っていたところに、光をあてて、道筋を見せてくれたんだ。オードリーは賢いからさ、そうやっていつも俺の前を照らしてくれる」

「そうなんですね」

今のふたりを見ていると、どちらかといえばレイモンドがしっかりしていて前向きに見えるが、出発点は逆だったらしい。レイモンドにとっては、単純に好きというだけではなく、尊敬に似た感情があるようだ。

「だから、オードリーが困って立ち止まったときは、今度は俺が助ける番だ」

「……素敵ですね」
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