お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。

「初めまして、ロザリンド・ルイスと申します」

「ウィル、彼女はルイス男爵家のご令嬢だ。こちらはレイモンド。アイビーヒルの料理人だ。彼にはしばらくここで料理人として働いてもらう。今日の夕飯は彼の料理が食べたいんだ。頼むぞ」

「かしこまりました。ロザリンド様、レイモンド。私は執事を任されております、ウィリアム・ターナーと申します。ウィルとお呼びください」

「よろしくお願いします」

ロザリーとレイモンドはそろって頭を下げ、そのあと、ウィルは従僕を呼びつけ、レイモンドを厨房に案内するように告げた。

「レイモンド殿には、使用人用の一室を与えるように」という言葉に頷いた従僕に連れられて、レイモンドは荷物を自分でもって歩いていく。

「ロザリンド様のお荷物はこちらですね」

とウィルに言われて、「あ、私、自分で持てます」と手を伸ばしたロザリーに、思いもかけないことが起こった。
ケネスが、その伸ばした手をパシンと叩いたのだ。

「え?」

「言っただろう? スパルタでいくと。ロザリー、令嬢は執事に運ばせるので正解だよ。君はあくまでも優雅に、上品に歩くことに集中して」

「は、はいっ」

改めて気を引き締めて前を向くと、バタバタという足音が上から響いてくる。

「お兄様、お帰りになったのね?」
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