お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
「クロエ嬢はただの友人です。パートナーはいりませんよ。王家主催の夜会なら、王子が出席するのは義務です。仕事と一緒です。ひとりで出ることに抵抗はありません」
至極まじめにザックが返すと、バーナード侯爵が苦笑する。
「相変わらず固いな。君のとこの、ほら、ケネス君か。彼がいなくなってから特にそうだ。アイザック様、もう少し雰囲気をやわらげないと人が寄ってきませんぞ」
それは事実として認識しているので、ザックは何も反論ができず黙っていた。
苦笑しながら助けに入ってきたのはイートン伯爵だ。
「まあまあ、ところでうちの愚息は一体何をやらかしたんですかな? ある日突然執務補佐を辞めたと言って帰ってきたので、相当に驚いたんですがね」
「執務補佐を辞めたのはケネスの都合です。俺が辞めさせたわけではありません」
「あいつもそう言っていましたがね。……なにを言っても聞くような息子ではないので、私も傍観していますが」
「ケネスにはケネスの考えがあるんですよ。今回、それが俺と合わなかっただけの話で……」
ひと月前、会話の行き違いからケネスが執務補助を辞めた。
代わりに入ってもらったリドル・コーナー男爵子息は、非常にまじめに仕事をしてはくれるが、完全なるザックのイエスマンであり、すべての事柄に対してザックは自分で精査し決定しなければならなくなっている。
考えなければならないことは、山のように積み重なっていくのに、負担は増えるばかり。
ケネスがいてくれたら……という思いは常に付きまとうが、ケネスはロザリーを王都に連れてこようとしていた。それは絶対に阻止しなければならない。
ザックは大きなため息をつき、王都に戻ってからこれまでの経緯を思い出した。
至極まじめにザックが返すと、バーナード侯爵が苦笑する。
「相変わらず固いな。君のとこの、ほら、ケネス君か。彼がいなくなってから特にそうだ。アイザック様、もう少し雰囲気をやわらげないと人が寄ってきませんぞ」
それは事実として認識しているので、ザックは何も反論ができず黙っていた。
苦笑しながら助けに入ってきたのはイートン伯爵だ。
「まあまあ、ところでうちの愚息は一体何をやらかしたんですかな? ある日突然執務補佐を辞めたと言って帰ってきたので、相当に驚いたんですがね」
「執務補佐を辞めたのはケネスの都合です。俺が辞めさせたわけではありません」
「あいつもそう言っていましたがね。……なにを言っても聞くような息子ではないので、私も傍観していますが」
「ケネスにはケネスの考えがあるんですよ。今回、それが俺と合わなかっただけの話で……」
ひと月前、会話の行き違いからケネスが執務補助を辞めた。
代わりに入ってもらったリドル・コーナー男爵子息は、非常にまじめに仕事をしてはくれるが、完全なるザックのイエスマンであり、すべての事柄に対してザックは自分で精査し決定しなければならなくなっている。
考えなければならないことは、山のように積み重なっていくのに、負担は増えるばかり。
ケネスがいてくれたら……という思いは常に付きまとうが、ケネスはロザリーを王都に連れてこようとしていた。それは絶対に阻止しなければならない。
ザックは大きなため息をつき、王都に戻ってからこれまでの経緯を思い出した。