嵐を呼ぶ噂の学園② 真夏に大事件大量発生中!編
「ことちゃん、さっきはごめんね。あたし、つい怒っちゃって。その恩返しってことであたしにも色々手伝わせて」


「いえいえ、園田さんはあちらで待ってて下さい。ここ、油もすごくて下手したら滑ります」



わたしがそう言うと、園田さんはわたしの両肩に手をぽんと乗せた。



「ことちゃんと一緒にやりたいの。だからやらせて」



園田さんが真っ直ぐに見つめてくる。


清んだ栗色の瞳がわたしの心を動かす。


わたしはこくりと頷いた。



「じゃあ、あたしは朱比香と自分と赤星くんの作るから」


「そう言えば赤星くんに聞いて来ませんでした」


「あの人ああ見えて甘党だから、イチゴミルクが好きらしんだけど、乾杯にはワインでしょってことで、同じ原材料のブドウジュースにするって言ってた」


「聞いて下さり、ありがとうございます」


「ことちゃんに接触されるよりはマシかなって」



ほへ?


なんでそこまで赤星くんを嫌うんだろう。


わたしが赤星くんと仲良くしちゃいけない理由って何?


未消化の疑問は残っているが、後々教えてもらえることを祈ってひとまずスルーすることにした。


「あたしさ、一応、朱比香とは仲直りしたいなって思ってるの」


園田さんがオレンジジュースの口を開けながら話し始めた。



「朱比香、スッゴい悪いやつだけどスッゴい寂しがりやなんだわ。

波琉にフラれて来たくなかったはずなのに誘ったらちゃんと来たし。

たぶん人が恋しいんだよね。

色々あったけど、やっぱ、小さい頃から一緒にいたから憎み切れないわけ」


園田さんがキャップを捻るとシュワッというサイダーの爽やかな音が聞こえた。


「好きなものだって似てる」


懐かしそうにオレンジサイダーを眺めている園田さんの横顔がすごく美しく輝いて見えた。


人は大切な何かを見つけるとこんなにも清々しい表情になれるんだと初めて知った。



「ここにマーマレードジャムを入れると完成なんだけど、ある?」


「たしかこちらの冷蔵庫に...。あっ、ありました!」


「サンキュ」


お父さんが朝はパン派だからジャムは常備している。


今あるのは、イチゴジャムとマーマレードジャムにチョコクリームの3種。


一度に使う量が半端ないから、3種あっても一気に無くなってしまう。


だから中年太りも加速するんだろうけれど、わたしは決してそのことを言わない。


多少は自分の体を心配してもらいたいけど、別に何を食べてもいいし、それを食べて幸せならそれで良いかなって思ってるから。


園田さんはお父さんとは違ってスプーン一杯分を入れてかき混ぜた。



「よし、完成!あとは赤星くんのね。...ってことちゃん、誰のもやってないじゃん!」


「あっ、すみません!」


「あたし、汐泉さんのブドウもやるけど、ことちゃんは何にする?」


「わたしは青柳くんと同じくリンゴにします。大至急やりますのでブドウさんよろしくお願いします!」


「はいよ」



わたしはリンゴジュースを冷蔵庫から取り出した。


珍しく瓶のようで栓抜きが必要なようだ。


栓抜きなんてどこにあるの?



「ことちゃん、こっち出来たから先持ってくね」


「あっ、はい!」



栓抜き、栓抜きぃ。


あれ、どこにあるのでしょおねぇっと。


歌っている場合じゃないのに脳内に意味不明なリズムが流れる。


引き出しを開けては閉めを繰り返し、4つ目の引き出しがビンゴ。



「よし、これで...」


わたしは自分の手に力を入れた。


はい、よいしょっと!



すぽーん。



すんなり抜けたのは良かったが、中からなぜか溢れる泡。


あれ、これってサイダー?


リンゴサイダーなんてあったっけ?


悩んでいる暇などない。


開けてしまったのだから飲みきらなきゃ。


グラスに注ぎ入れ、泡が収まるまで数秒待ってから運び込んだ。



「すみません、お待たせしました!」


「ことちゃん、早く早く!」


「遅れてすみません。主役の方には一番にお出ししないとならないのに」


「ま、別にいい」



青柳くんが特に気にしていないようで良かった。


ふっと胸を撫で下ろしたのも束の間。


ここからが本番だ。



「大変お待たせしました。これより青柳波琉くんのバースデーパーティーを行います。それでは...」


「かんぱーい!」
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