終わる世界で、きみと恋の埋葬
……逃げて、くれるんだ。わたしの欠片を連れて、このひとは逃げてくれるんだ。


「ほ、ほんとに?」

「ほんとに」


思わず失礼な返しをしてしまったのに、怒らずに穏やかに頷いてくれて。

こちらもそのおかげで、そうなんだ、とすとんと納得して。


そうなんだ。そう、なんだ。


「……じゃあ、今度から小さいのに描こうかなあ」

「ん」


おそるおそる音にのせてみたら、やっぱり穏やかに頷いてくれた。


小さい絵なら持って逃げてくれる——それは、きみが、怖がりなわたしにくれた、とても優しい約束だった。


それから思い出をたどるように小さな絵を描いた。


かつて通い詰めた購買の椅子の絵、雨の日に濡れそぼっていた紫陽花の絵。


まだ人の絵は描けなかったけど、描き上がったものを見せる度、渡辺くんは何も言わずにただ褒めてくれる。


みんなが精一杯生きて、誰かを幸せにしたくて、そうしてまだ、世界は滅びに向かっていた。
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