破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします
「はっ」
「お前、女を見る目がなさすぎだ」
「……は?」
「後でアーシェを返してくれと言われても返せないからな」
はっきりと告げ、ザックはアーシェリアスの手を離すことなく再び足を進める。
「ちょっ、ザック……何を言ってるのっ」
ほんのりと頬を赤らめるアーシェリアスは、腕を引くザックを半歩後ろから見つめた。
表情は見えないが、耳は明らかに朱を差している。
「そのままだ」
それは昨夜、キャンドルの炎が揺らめく宿の庭で見せた反応と同じ。
「……また、自分で考えろって言うんでしょう?」
そして曖昧に終わるのだと、もどかしくも落ち着かない気持ちで零したアーシェリアスに、ザックは密かに深呼吸してから告げる。
「じゃあ……特別にヒントをやろうか」
「えっ」
まさかヒントをもらえるとは思ってもなかったアーシェリアスは、トクントクンと胸を高鳴らせて言葉を待った。
前を向いていたザックが、優しく吹き抜ける風に、金の髪を柔らかく揺らして振り向く。
形のいい薄い唇が開き、透明な海のように美しいエメラルドグリーンの瞳がアーシェリアスを見つめた。