お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
総務部へ戻ると、すでに段ボールは雉名さんによって運び込まれていた。しかし、彼の姿はない。

「ああ、立花さん。今、雉名さんが来て荷物置いていきましたよ」

上村さんがパッと表情を明るくして言う。

「あ、うん。さっき、そこで別れて」

私は何事もなかったかのように平静を装って席についた。

しばらく自分の作業に没頭していたが、真横から注がれる絡みつくような視線に耐えかねて、私は顔を上げた。

上村さんが、すがるような眼差しで私を見つめている。

ええっと、雉名さんのことだよね……。

困り果てた私は、曖昧に濁そうかと悩んだけれど、それもよくないと思い直し、雉名さんに言われた通りに答えようと心を決めた。

「……彼、好きな人がいるみたい」

「……そうですかぁ」

しゅんとしてしまった彼女に、なんだか追い目を感じてしまう。

こんな話、雉名さんに聞かなければよかった、今さらながら後悔したところで――。

「好きな人ってことは、恋人ではないってことですよね?」

「え?」

上村さんが大きな瞳をキリっと輝かせたから、私は戸惑いながらも頷いた。

「じゃあ、可能性はゼロではないってことですよね!? よかった! 私、頑張ってみます! いいですよね!?」

「う、うん……」

予想以上にタフな彼女に気圧されて、私はこくこくと頷く。

むしろ、恋人がいないとわかって安堵したらしく、彼女の闘志はいっそうみなぎっている。

彼女の想いを応援してあげたいけれど、私がそれをしたら雉名さんに対して失礼だよね……。

どちらにも傾けられない複雑な想いに、私は頭を抱えるのだった。
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