お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
鏡の前に立つ自分は別人のようで、キラキラと輝いて見えた。

その隣に、光沢の強いスリーピースのスーツを着てドレスアップした柊一朗さんが並べば、途端にその場の空気がパーティー仕様に様変わりする。

「綺麗だよ、澪。誰にも見せたくない。でも、みんなに見せびらかして自慢してやりたい」

「ふふ、どっちですか」

矛盾だらけの感想は突っ込みどころが満載。でも、私が柊一朗さんへ抱いた感想も似たようなものだからよくわかる。

この着物も、綺麗なかんざしも、全て柊一朗さんが見立ててくれた。

今日の私は、柊一朗さんのオーダーメイドだ。

「会場に着いたら、決して俺から離れないで」

「はい……わかりましたけれど、なにかあるんですか?」

「なにがあるかわからないからだ。手の届くところにいないと守れないだろう」

柊一朗さんがなにを言いたいのか、いまいちよくわからなかったけれど、きっと場慣れしていない私を気遣ってくれているのだろう。
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