お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「早くついてしまったね。少し部屋で休もうか」

そんな柊一朗さんの言葉を受けて、品のいいホテルマンが私たちを二十九階へと案内してくれた。

客室としては最上階にあるというそのフロアは、広々とした廊下にフカフカの絨毯、ところどころ生花やオブジェが飾られており、高級感が漂っている。

ホテルにしては、ドアの数が少ない。きっと一部屋一部屋がとても広いのだろう。

大きくて立派な両開きの扉の前で、ホテルマンはカードを滑らせロックを解除する。

扉を押し開けると、想像以上に大きなリビングルーム。西洋の宮殿を思わせる華美な調度品。窓の外に広がる、壮大な都心の眺望。

奥に続く廊下には、たくさん扉がついていて、いったい何部屋あるのだろうと眩暈がしてきた。

「ここ……」

明らかにスイートルームだ。生まれて初めてこんな豪勢な部屋に足を踏み入れた。

圧倒されている私の手のひらに、彼はスペアのカードキーを置く。

「俺の部屋だ。好きに使ってくれてかまわない」
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