お見合い求婚~次期社長の抑えきれない独占愛~
「今日は、会社の役員としてではなく、一個人として訪問することになっている。千堂家からも幾分かは出資しているからね」

個人で出資するってどういうことなんだろう。なんだか規模が大きすぎてよくわからなくなってきた。

「だから秘書もつけなかった。これで多少は面倒ごとを避けられるだろう。今日はずっと君のそばにいられる」

萎縮しきりの私の肩に手を回し、守るようにきゅっと抱き寄せてくれる。

つまりは、身動きがとりやすいように、取り計らってくれたってことだよね……?

彼は、着物で歩きづらい私にペースを合わせて、ゆっくりと歩みを進めてくれる。

「柊一朗さん、お久しぶりです」

正面から声をかけてきたのは、胸元がギリギリまで開いたドレスを纏う派手めな女性だった。

大きすぎる胸が今にもドレスからこぼれ落ちそうでヒヤヒヤする、どこに視線をやればいいのだろう?

美女という言葉がぴったりだが、目元の皺がわずかに隠しきれておらず、私よりひと回りくらい年上であることを匂わせていた。美女というよりは美魔女だ。
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